長嶺安政駐オランダ日本国大使の離任挨拶 |
2013年7月19日
オランダの皆様
オランダの夏を感じさせる今日この頃となりましたが、皆様方には益々ご健勝のことと拝察致します。 さて、私自身のことになりますが、この度日本に帰国するようにとの命を受け、7月19日に当地を離れることになりました。 昨年10月末の当地着任以来、皆様には色々な場所でご助言、ご支援を賜りありがとうございました。このように短い期間の勤務となることは予想しておりませんでしたので、皆様にはこれからも何度もお目にかかり、当地でのご活躍振りに触れながら、これからの日蘭関係、日欧関係につき、色々とご示唆を得たいと考えておりました。これが叶わないことは残念であります。 一方で、この10ヶ月は短い期間ではありましたが、私にとり実りの多い勤務となりました。昨年11月に信任状を提出させて頂いたベアトリックス女王陛下が本年1月に退位を表明され、4月30日には退位式とウィレム・アレキサンダー新国王の即位式が行われました。オランダにとり重要なこの行事へのご出席のために我が国から皇太子同妃両殿下がご来訪され、一連の行事に臨まれると共に新国王王妃陛下との交流を深められたことは、日蘭の友好関係の増進に大きな一歩を記すこととなりました。 また、政治レベルでの対話の強化という観点からは、4月初めに岸田文雄外務大臣がハーグを訪問され、ティンマーマンス蘭外相との間で、緊密な協議が行われました。この他にも林芳正農水大臣及び西村康稔内閣府副大臣のオランダ御訪問を通じて、日蘭のハイレベルの対話が継続された他、オランダの先進的な農業、食品産業の現況を見ていただくことができました。 経済面では、3月に日・EU経済連携協定の交渉開始が決定されたことを受けて、精力的に協議が始まりました。高いレベルの経済連携協定を作ることにより、日蘭経済関係に更に弾みをつけたいと念願しています。 今年は我が国の政治経済の行方が大いに注目されています。このような中で日本の実情をオランダの皆様に知って頂くための努力も色々行って参りました。オランダの主要新聞社との意見交換も積極的に行いました。 オランダ在住の日本人の皆様への適切なサービスの提供にも重点を置いて参りました。当地でも海外邦人安全対策協議を立ち上げるべく現在大使館として準備を進めております。また、日系企業の皆様への支援を重要な課題と位置付けて参りました。在蘭日本商工会議所の会合に何度も参加する機会を頂きました他、個別の企業の現場を訪れ、大使館としてどのような支援が可能か確認して参りました。 日蘭の地方と地方の結びつきの強化も私の課題でした。幸いオランダからもライデン市、ロッテルダム市の市長初め訪問団が日本を訪れ、日本からは、福岡市長の御訪問もあり、日蘭間の地方連携が進んでいます。 文化面では、ハーグ郊外のクリンゲンダール日本庭園が100周年を迎えており、私も春のオープニングでお祝いを申し上げました。デンヘルダーのオランジェリー日本庭園を訪問したことも意義深い経験でした。 これらのことを通じて、短い期間ではありましたが、日蘭の友好関係、強い経済連携を少しでも進めるために寄与できたのではないかと自負しております。 国際機関の活動に目を転じますと、昨年着任後、化学兵器禁止条約機構(OPCW)の締約国会合、5年に一度の再検討会議、国際刑事裁判所の締約国会議等の会議が目白押しで、これらに適切に対応するよう努めました。特に、OPCWの再検討会議が円滑に開催され、実のある報告書が採択されたことは特筆に値します。私も1月以降4月半ばまでこの対応に追われました。 国際司法裁判所においては、我が国の調査捕鯨を巡る案件への対応が大きな課題でした。6月26日から7月16日まで3週間にわたりハーグの平和宮において口頭弁論が行われましたが、この国際訴訟に過去3年にわたり関わってきた私としては、口頭弁論が無事終わったことに安堵しております。 このような中で10ヶ月はあっという間に過ぎ去りました。まだまだこれからすべきことが多く残っていますが、大使館としては、引き続き皆様の期待に応えられるよう適時、適切な対応に努めて参ります。どうぞこれからも大使館に対しご示唆、ご助言を賜りますようお願い申し上げます。
在オランダ日本国大使
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