猪俣大使2018年新年挨拶

平成30年1月4日

 皆様、明けましておめでとうございます。
新年を迎えるに際し、まずは昨年を振り返りつつ、2018年の抱負を述べさせて頂ければと思います。

 オランダでは、2017年3月に下院選挙が実施され、ルッテ首相率いる自由民主国民党(VVD)が、議席を減らしつつも、他党を引き離して第一党の立場を維持し、その後、約7ヶ月にわたる連立組閣交渉を経て、10月26日に、ルッテ首相を首班とする、自由民主国民党(VVD)、キリスト教民主同盟(CDA)、民主66党(D66)及びキリスト教連合(CU)の4党連立による第三次ルッテ内閣が成立しました。外交面では、オランダは今年一年間、国連安全保障理事会の非常任理事国を務めることとなっており、国際社会が抱える様々な課題への取り組みに注目していきたいと思います。

 オランダの経済は、他のヨーロッパ諸国に比べて堅固に成長しています。オランダ政府が発表した2017年の経済成長率、財政黒字、政府債務、失業率等の予測では、今後とも継続的にオランダの経済が成長を続ける見込みとなっています。日蘭の投資状況は、日本からオランダへの投資残高は、欧州内で2番目となっています。一方、オランダから日本への投資残高も欧州内で2番目となっています。オランダにおける日系企業数は、374社と2013年を底に年々増加しています。

 2017年は、谷合農林水産副大臣を始め日本から多くの視察団が訪蘭し、改めてオランダの先進的な施設園芸に対する日本の関係者の関心の高さを感じました。日蘭農業分野の関係を強化するために、2016年創設した「農業協力対話」に基づき、分科会が3回開催され、11月には第1回本会合が日本において開催されるなど、双方の協力関係は一層強固なものになっております。こうした、農業分野におけるイノベーションの推進、並びに知見及び専門知識の交換を通じて、両国の農業分野での発展が一層期待されます。

 日・EU関係については、2016年7月に日本政府内で「英国のEU離脱に関するタスクフォース」の第1回会合が開催されて以降、2017年12月までに7回会合が開催されてきました。英国のEU離脱に関しては、日系企業の方々のご関心も髙いと存じます。また、2017年12月に日本と欧州の間で日EU経済連携協定(EPA)の交渉が妥結しました。今後、本協定の署名、批准等のプロセスを踏んで、本協定が発効した暁には、日・EU双方に持続可能で包摂的な経済成長をもたらすと確信しています。

 日蘭の二国間関係では、2017年11月に長崎の出島表門橋完成記念式典に御出席のため、ローレンティン妃殿下が訪日され、同式典には秋篠宮同妃両殿下も出席されるなど、日蘭両国の皇・王室間の交流が図られました。また、この機会に長崎市とライデン市の姉妹都市提携が結ばれました。加えて、同月には、国際青年会議所主催の国際青年会議所世界会議がアムステルダムにおいて開催され、日本から寬仁親王妃信子殿下の御臨席を賜りました。

 また、2017年も在オランダ日本国大使館は、様々な文化行事を各方面の方々と協力して実施しました。アムステルフェーンで開催された春の桜祭り、秋のジャパン・フェスティバルや、6月にライデンで開催されたジャパンマーケットなど、様々な日本関連行事に参加しました。3月に開催した第30回日本語弁論大会にはたくさんの方々に出場いただきました。6月の岡本行夫・元内閣総理大臣補佐官の講演会は、政治や経済の観点から、現在の日本の姿についてオランダの方々により深く理解いただく機会となりました。広報文化センターでは、書道、合気道などのワークショップや文化庁文化交流史の増田セバスチャン氏による講演会などを開催しました。2018年も様々な文化的行事の場を通じて、日蘭の交流を図って行く所存です。

 2017年度外国人叙勲においては、春にヤコブ・ファン・デル・ホート前ロッテルダム名誉総領事とハイン・オディノ前オランダ剣道連盟会長が、秋にヨープ・スタム・エラスムス大学およびトゥウェンテ大学名誉教授とコー・ノーテン元大使館職員が受章しました。また、テル・アフェスト在アムステルダム名誉総領事、ウィレム・ブリエット在ロッテルダム名誉総領事が新たに名誉総領事として、2017年に、任命されました。ご両名の今後の活躍に期待すると共に、大使館と共に、皆様のお役に立てればと願っております。

 化学兵器禁止機関(OPCW)においては、2017年は化学兵器禁止条約発効20周年の節目の年でした。2018年も、今後の20年間を見据えつつ、日本として、国際社会の大きな懸念となっているシリアにおける化学兵器問題のほか、化学兵器禁止条約関連の懸案事項の討議を通じ、世界的な化学兵器の全廃及び不拡散に向けて、引き続き化学兵器の禁止を目指す国際的な取組・軍縮努力に貢献していきたいと思います。
2017年12月、国際刑事裁判所(ICC)裁判官選挙が行われ、赤根智子国際司法協力担当大使兼最高検察庁検事が当選されました。心からお祝いを申し上げると共に、豊富なご経験に基づく、今後のご活躍に期待したいと思います。また、昨年はアブラアム国際司法裁判所(ICJ)所長やクーヴルールICJ書記が外務省の招待で訪日され、盛山法務副大臣が訪蘭されるなど、法曹関係者の往来が活発な年でしたが、2018年もこの勢いを維持し、一層強化していきたいと思っています。

 昨今、フランス、ベルギー、ドイツ、スペインなどの欧州各地を始め、世界各地で大規模なテロが頻発しており、オランダにおいても引き続き予断を許さない厳しい状況にあります。日本国大使館としましては、在留邦人の皆様の安全確保は最優先事項であり、昨年は日本人学校・日本語補習授業校の更なる安全対策強化に取り組みました。今後もオランダ治安当局等との連携を深め、在留邦人の皆様へ治安情勢・テロ情勢等の情報提供と共に、皆様の安全確保のためのできる限りの措置を積極的に行っていく所存であります。

 なお、2017年9月に発生したハリケーン「イルマ」によりカリブ海のオランダ領シント・マルテン島が被災した際、現地に取り残された日本人の方の緊急輸送をオランダ外務省及び国防省と協力して実施しました。被災された方々に対し、改めてお見舞い申し上げますとともに、これからも、緊急事態に備え日蘭並びに各国との協力関係の構築を図っていきたいと考えております。

 最後になりましたが、皆様のご多幸とご繁栄をお祈りして、私の新年の挨拶とさせていただきます。


 

2018年1月
猪俣 弘司
駐オランダ日本国大使