堀之内大使2020年新年挨拶

令和2年1月6日

 皆様,新年明けましておめでとうございます。
 昨年9月にオランダに着任させていただき,初めてのお正月を迎えることができました。新年のご挨拶の機会に際し,昨年を振り返えるとともに,今年の私の抱負を述べたいと思います。
 
 まず,政治に目を向けますと,オランダでは,昨年5月の上院選挙の結果,連立与党が上院での過半数を失い,ケース毎に野党の協力を得て法案を通過させる必要が生じましたが,第三次ルッテ内閣は,良好な経済状況を背景として,ルッテ首相のリーダーシップの下,引き続き政権の安定を図ってきました。他方,窒素排出量の規制を巡る問題では,農業・建設業界が大規模な示威行動を起こし,また,教育界でも教員の待遇改善を求めてストライキが実施されるなど,現内閣にとって厳しい場面も見受けられており,今後も引き続き政局の動向に注目していきたいと思います。
 二国間関係では,昨年1月,安倍総理大臣が当地を訪問され,ルッテ首相との間で日蘭首脳会談を行い,様々な分野において引き続き緊密に連携・協力していくことで一致しました。また,6月には,日本でG20大阪サミットが開催され,これにルッテ首相が出席されるとともに,マキシマ・オランダ王国王妃陛下も出席されました。さらに,10月の即位の礼には,オランダ国王王妃両陛下にご参列いただくなど,日蘭の王室・皇室交流にとって非常に大きな節目となる一年となりました。
 経済関係は,日蘭双方の貿易・投資支援機関の皆様の日々のご尽力もあり,オランダへの進出日系企業が増加するなど,強固な関係を維持しています。通商問題を巡る緊張や英国のEU離脱の行方等世界経済の先行きには不透明感がありますが,本年も,皆様の経済活動が円滑に進みますよう,大使館としても精一杯サポートさせていただく所存です。
 昨年もJCCや日系企業の皆様には様々な文化行事でご協力をいただきました。秋には,オランダの団体・企業とも協力してジャパンフェスティバルを実施し,日本文化を通して日蘭の多くの方々に交流を楽しんでいただきました。そして,ついに本年,日本で東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されます。また,本年4月1日から日蘭間のワーキング・ホリデーも開始する予定です。オランダの方々の訪日への関心に応え,当館もJNTO(日本政府観光局)と協力し,旅行博への参加や情報発信に力を入れています。私自身,大使館フェイスブックでも,オランダ語で様々な情報を発信しています。本年も,こうした情報発信や文化行事等を通じて日蘭の更なる交流を図っていく所存です。
 一方,昨年3月,ユトレヒト市内においてテロとみられる銃撃事件が発生し,また,テロ計画との関連が疑われる者の逮捕も相次いでおり,オランダでは厳しいテロ情勢が続いております。大使館にとって,在留邦人の皆様の安全確保は最優先事項です。オランダにおいて皆様が安心して日々を過ごせるよう,引き続きオランダ治安当局等との連携・協力関係を深めていくとともに,皆様への治安情勢・テロ情勢等の情報提供をしっかりと行うなど,安全確保のためにできる限りの措置を行っていく所存です。
国際機関との関係では,本年は,春に京都で国連犯罪防止刑事司法会議(通称「コングレス」),また秋には国際司法裁判所(ICJ)裁判官選挙が予定されています。様々な課題に直面している国際刑事裁判所(ICC)では,締約国のイニシアティブの下で改革への取組が行われています。日本は法の支配を外交の柱に掲げており,本年も国際司法分野において積極的に貢献する所存です。
 また,化学兵器禁止機関(OPCW)については,昨年6月に,フェルナンド・アリアスOPCW事務局長を日本に招待し,外務大臣,防衛大臣をはじめとする閣僚と面会いただくとともに京都や広島も訪問いただきました。唯一の被爆国として,大量破壊兵器の一つである化学兵器禁止に向けた国際的な取組への貢献を継続していきます。
 
 令和2年も,日本とオランダを取り巻く様々な動きに目を配り,館員ともども大使館としての責務を果たせるよう努めて参ります。ご意見等がありましたら,遠慮なくご連絡いただければ幸いです。
 皆様の今年一年のご多幸とご繁栄をお祈りして,私の新年のご挨拶とさせていただきます。