堀之内大使2023年新年挨拶

令和5年1月1日
在オランダ日本国大使 堀之内 秀久

皆様、新年明けましておめでとうございます。

オランダに着任し、4度目のお正月を迎えることができました。皆様への新年のご挨拶の機会に際し、昨年を振り返るとともに、今年の抱負を述べたいと思います。

昨年は新型コロナウイルスに関連する規制がほぼ撤廃され、ようやく「日常生活」が戻ってきました。一方で、昨年2月にロシアによるウクライナ侵略が勃発し、世界情勢は著しく変化しました。ウクライナでは多くの無辜の命が犠牲となっているほか、世界中で物価高騰や食料品不足等の問題が生じました。一日も早く、ウクライナでの悲劇が収束し、平和な世界が訪れることを願ってやみません。

さて、政治に目を向けますと、戦後最長の連立交渉を経て、昨年1月に第四次ルッテ内閣が発足しました。現在、上院は与党議席が過半数を割っており、いわゆる「ねじれ」の状況であるため、本年5月の上院選挙の結果を実質的に決めてしまう3月15日の統一州議会選挙で与党4党が過半数を確保できるか否かが注目されます。また昨年は、政府の窒素政策に反発する農業従事者によるデモが多数発生し、依然として与党内部でも内閣の方針について意見が分かれているところ、今後の対応が注目されます。

二国間関係では、昨年は2回の日蘭外相会談が行われました。7月、林外務大臣が、インドネシアで開催されたG20外相会合でフックストラ外相と会談し、林大臣からは、ロシアによるウクライナ侵略への対応や「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、協力を一層強化していきたいと述べました。両大臣は、ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であるとの認識で一致するなど、両国の連携を一層強化していくことを確認しました。また9月にフックストラ外相が故安倍晋三元総理の国葬儀に参列した際にも会談を行い、林大臣より、フックストラ外相からの弔意に謝意を述べました。

経済関係については、昨年春以降、いわゆる「ウィズ・コロナ」の段階に入ってきたことから、両国間の往来も増え始め、一定程度ビジネスが正常化されてきたのではないかと思います。他方、大幅な円安や世界的なインフレなど、引き続き難しい状況が続いておりますが、そのような時こそ両国間の協力は重要になると思います。本年も引き続き、日蘭経済関係の強化・発展に努めてまいります。

文化広報行事としては、昨年6月、3年ぶりにジャパンフェスティバルが開催されました。日本関連情報を提供する当館ブースでは、観光情報を求める方や「早く日本に行きたい」とおっしゃってくださる方々も多く、日本の文化や芸術への関心の高さを感じました。また、大使館では、SNSを通じた文化紹介等の対外発信にも力を入れているところ、Facebook及びYouTubeチャンネルに加え、昨年新たにTwitterの運用も始めましたので、是非フォローいただけたらと思います。そして例年、日本関連企業や団体の協力を得て開催している日本語弁論大会を開催予定です。このような事業を通じ日本とオランダの親交を引き続き進めていきたいと思っております。

一方、治安情勢について、欧州では昨年中もテロ事件が発生しており、オランダがテロの標的とされることも否定できない状況にあります。また、街中で発砲事件や爆破事件が発生するなど、テロ以外にも皆様に危害が及ぶおそれのある事件が発生しているほか、置き引き、電話詐欺、サイバー犯罪等の一般犯罪も多発しており、引き続き、身の安全に注意を払う必要があります。大使館にとって、在留邦人の皆様の安全確保は最優先事項でありますので、引き続き、治安情報を適時適切に提供するなど、皆様の安全確保のためにできる限り対応していく所存です。

昨年は、国際司法裁判所(ICJ)及び国際刑事裁判所(ICC)の双方においてウクライナの事案が持ち込まれるなど、当地国際機関における活動は、世界情勢の大きな変化の影響を強く受けた1年でした。特にICCにおいては、我が国として初めて事案の付託を行いました。本年も我が国の外交の柱である法の支配の普及に向けて、国際司法分野において積極的に貢献する所存です。

化学兵器禁止機関(OPCW)においてもロシアによるウクライナ侵略により、化学兵器の使用や産業毒性物質の拡散の脅威に関して多くの締約国から懸念が示されました。シリアの化学兵器使用事案、ロシアの反政府活動家ナヴァリヌィ氏に対する毒物使用に関しても議論が継続しております。このような中、本年5月に5年に1回の化学兵器禁止条約運用検討会議が開かれます。引き続き、化学兵器の禁止及び不拡散のための国際的な取組や努力に貢献してまいります。

最後になりますが、自分は昨年末に帰朝の発令を受け、1月後半に離任予定です。この3年余の在勤期間中、皆様から頂いた温かい御支援に心より感謝申し上げます。令和5年も、日本とオランダを取り巻く様々な動きに目を配り、館員を挙げてともども大使館としての責務を果たせるよう努めて参ります。皆様の今年一年のご多幸とご繁栄、そして何よりもご健康をお祈りして、私の新年のご挨拶とさせていただきます。